こしあん
2019-01-18

TensorFlowでコサイン類似度を計算する方法

Pocket
LINEで送る
Delicious にシェア

4.3k{icon} {views}



TensorFlowで損失関数や距離関数に「コサイン類似度」を使うことを考えます。Scikit-learnでは簡単に計算できますが、同様にTensorFlowでの行列演算でも計算できます。それを見ていきます。

コサイン類似度

コサイン類似度は、ユークリッド距離と同様に距離関数として使われる評価指標です。距離関数が必要になる状況とはどういうことかというと、「k-Nearest Neighbor法」のような最近傍探索を行う場合に、「どのサンプルが最も近いか」を計算する指標として使います。

コサイン類似度の定義は次の通りです。a, bという2つのベクトルがあるとします。

$$\cos(\vec{a}, \vec{b})=\frac{\vec{a}\cdot \vec{b}}{|\vec{a}||\vec{b}|} $$

2つのベクトルの内積をそれぞれのノルムで割ります。これは見方を変えれば「ノルムが1になるようにa,bを標準化したベクトルどうしの内積」でもあります。

同時にこれは、a,bの次元が2なら平面上での2つのベクトルのなす角に対するコサインになりますので、コサイン類似度の取る値は-1~1になります。2つのベクトルが同一なら、なす角は0度なので、コサイン類似度は1。2つのベクトルが反対を向いていたら、なす角は180度なので、類似度は-1となります。直感的には相関係数とイメージが近いですね。

Scikit-learnでのコサイン類似度

さて、このコサイン類似度はScikit-learnでは簡単に計算できます。

from sklearn.metrics.pairwise import cosine_similarity

これでScikit-learn組み込みのコサイン類似度の関数を呼び出せます。例えばA,Bという2つの行列に対して、コサイン類似度を計算します。

import numpy as np
from sklearn.metrics.pairwise import cosine_similarity

A = np.array([[0.2,0.3],[0.0,0.0],[-0.4,0.7]])
B = np.array([[1.1,0.1],[-0.3,-0.4],[0.0,0.2]])

def sklearn_cos():
    print(cosine_similarity(A,B))
    #[[ 0.62775245 -0.99846035  0.83205029]
    # [ 0.          0.          0.        ]
    # [-0.41549436 -0.39691115  0.86824314]]

これはA、Bの行の各要素(2次元ベクトル)に対して、行単位のコサイン類似度を計算したものです。

いま、この結果の3×3行列の対角成分を「ペア単位のコサイン類似度」と呼ぶことにします。このペア単位のコサイン類似度をNumpyで求め、次にTensorFlowで計算していきます。

ペア単位のコサイン類似度をNumpyで求める

コサイン類似度の定義から、Numpyでペア単位のコサイン類似度を書くと次のようになります。

def manual_cos():
    dot = np.sum(A*B, axis=-1)
    A_norm = np.linalg.norm(A, axis=-1)
    B_norm = np.linalg.norm(B, axis=-1)
    cos = dot / (A_norm*B_norm+1e-7)
    print(cos)
    # [0.62775229 0.         0.8682426 ]

式の定義に忠実に、ベクトルの内積を、ノルムで割っただけです。Sklearnの例と対角成分が一致しているのがわかります。

ペア単位のコサイン類似度をTensorFlowで求める

ではこれをTensorFlowで実装するとどうでしょうか?実は先程の「標準化したベクトルどうしの内積にほかならない」という性質を使います。TensorFlowにはベクトルや行列を指定した軸で標準化する関数があります(tf.nn.l2_normalize)。

import tensorflow as tf
import keras.backend as K

def tf_cos():
    tA = K.variable(A)
    tB = K.variable(B)
    norm_A = tf.nn.l2_normalize(tA, axis=-1) # axisを指定すること
    norm_B = tf.nn.l2_normalize(tB, axis=-1)
    cos = tf.reduce_sum(norm_A*norm_B, axis=-1)
    print(K.eval(cos))
    # [0.6277525  0.         0.86824316]

内積と言いましたが、ここではtf.matmulやK.dotではなく、要素間の積を計算し和を取るという操作を行います。あくまで「ベクトル」の内積ですからね。

一部KerasのAPIを使っていますが、with session~とかやりたくないので値の表示のためのものです。

Sklearnと同じコサイン類似度をTensorFlowで求める

では「ペア単位」ではなく、Sklearnと同じような行列どうしのコサイン類似度を求めてみましょう。Pythonでxy座標上の2点間の距離をforループを使わずに計算する方法で紹介した、次元の追加+ブロードキャスティングを使った方法を使います。

def tf_full_cos():
    tA = K.variable(A)
    tB = K.variable(B)
    norm_A = tf.nn.l2_normalize(tA, axis=-1) # axisを指定すること
    norm_B = tf.nn.l2_normalize(tB, axis=-1)
    norm_A_expand = tf.expand_dims(norm_A, axis=1)
    norm_B_expand = tf.expand_dims(norm_B, axis=0)
    cos = tf.reduce_sum(norm_A_expand*norm_B_expand, axis=-1)
    print(K.eval(cos))
    #[[ 0.6277525  -0.9984604   0.8320503 ]
    # [ 0.          0.          0.        ]
    # [-0.41549438 -0.39691117  0.86824316]]

内部的には、norm_A_expand, norm_B_expandは3階テンソルになり、norm_A_expandは(3,1,2), norm_B_expandは(1,3,2)というshapeになります。あとは最後の軸を和でreduceすれば、3×3の行列で出てきますからね。

相関行列ならぬ「コサイン類似度行列」をTensorFlowで求める

先程はA,Bという2つの行列に対してコサイン類似度を計算しましたが、Aという1つの行列に対して1行目と1行目、1行目と2行目……というコサイン類似度を計算するとどうでしょうか? もしこれが相関係数なら相関行列となるので、「コサイン類似度行列」といったところでしょう。

def cosine_matrix():
    tA = K.variable(A)
    norm_A = tf.nn.l2_normalize(tA, axis=-1)
    expand1 = tf.expand_dims(norm_A, axis=0)
    expand2 = tf.expand_dims(norm_A, axis=1)
    cos = tf.reduce_sum(expand1*expand2, axis=-1)
    print(K.eval(cos))
    #[[1.0000001  0.         0.44721362]
    # [0.         0.         0.        ]
    # [0.44721362 0.         1.        ]]

Aに0ベクトルが入っているので、対角成分が全て1になっていませんが、もしすべて0ベクトルでなければ相関行列と同様に対角成分が1となります。1行目3列目の成分と、3行目1列目の成分は、それぞれ1番目のサンプルと3番目のサンプルのコサイン類似度なので、相関行列と同様に対称行列となります。

これが何の意味があるかというと、Siamese Networkのような画像2つの同士の距離を学習していくケースで有効になります。事前に画像1と画像2のようなペアを列挙すると、組み合わせ爆発的にペアが増えて計算コスト的に効率が悪いのです。例えばもし、クラス1の画像が100枚、クラス2の画像が100枚あったとしたら、Positiveのペアは1クラスあたり100×99÷2=4950ケース、これが2クラス分で「9900ケース」。またNegativeなペアは同様に4950×2=9900ケース。累計で19800個のペアができることになります。

つまり、ペアの距離を学習させていく場合、ジェネレーターで生成する画像の組み合わせがN枚の画像に対して、Nの2乗のオーダーで増えていくことになります。100枚だったらまだ2万ケースとまだ常識的な範囲ですが、もしこれが1万枚になったら訓練するだけでも大変になります。

逆に、ジェネレーター側でペアを作らずに、ネットワークに与える画像はバッチ単位で何枚かを1つの入力で与え、カーネル法の要領で、損失関数でネットワークで内生的にペアを作り出すほうがまだ計算コストが良いです。こういった計算は行列がとても得意なので。このときにもし距離関数にコサイン類似度を使えば、コサイン類似度の行列が必要になります。厳密にはペアは「組み合わせ」なので、コサイン類似度の行列の三角行列から対角成分を取ったものを使います。

Siameseネットワークはまたこんどの機会に記事にしたいと思いますが、まあこういうのもあるんだなぐらいのイメージで考えておくと良いのではないでしょうか。



Shikoan's ML Blogの中の人が運営しているサークル「じゅ~しぃ~すくりぷと」の本のご案内

技術書コーナー

【新刊】インフィニティNumPy――配列の初期化から、ゲームの戦闘、静止画や動画作成までの221問

「本当の実装力を身につける」ための221本ノック――
機械学習(ML)で避けて通れない数値計算ライブラリ・NumPyを、自在に活用できるようになろう。「できる」ための体系的な理解を目指します。基礎から丁寧に解説し、ディープラーニング(DL)の難しいモデルで遭遇する、NumPyの黒魔術もカバー。初心者から経験者・上級者まで楽しめる一冊です。問題を解き終わったとき、MLやDLなどの発展分野にスムーズに入っていけるでしょう。

本書の大きな特徴として、Pythonの本でありがちな「NumPyとML・DLの結合を外した」点があります。NumPyを理解するのに、MLまで理解するのは負担が大きいです。本書ではあえてこれらの内容を書いていません。行列やテンソルの理解に役立つ「従来の画像処理」をNumPyベースで深く解説・実装していきます。

しかし、問題の多くは、DLの実装で頻出の関数・処理を重点的に取り上げています。経験者なら思わず「あー」となるでしょう。関数丸暗記では自分で実装できません。「覚える関数は最小限、できる内容は無限大」の世界をぜひ体験してみてください。画像編集ソフトの処理をNumPyベースで実装する楽しさがわかるでしょう。※紙の本は電子版の特典つき

モザイク除去から学ぶ 最先端のディープラーニング

「誰もが夢見るモザイク除去」を起点として、機械学習・ディープラーニングの基本をはじめ、GAN(敵対的生成ネットワーク)の基本や発展型、ICCV, CVPR, ECCVといった国際学会の最新論文をカバーしていく本です。
ディープラーニングの研究は発展が目覚ましく、特にGANの発展型は市販の本でほとんどカバーされていない内容です。英語の原著論文を著者がコードに落とし込み、実装を踏まえながら丁寧に解説していきます。
また、本コードは全てTensorFlow2.0(Keras)に対応し、Googleの開発した新しい機械学習向け計算デバイス・TPU(Tensor Processing Unit)をフル活用しています。Google Colaboratoryを用いた環境構築不要の演習問題もあるため、読者自ら手を動かしながら理解を深めていくことができます。

AI、機械学習、ディープラーニングの最新事情、奥深いGANの世界を知りたい方にとってぜひ手にとっていただきたい一冊となっています。持ち運びに便利な電子書籍のDLコードが付属しています。

「おもしろ同人誌バザールオンライン」で紹介されました!(14:03~) https://youtu.be/gaXkTj7T79Y?t=843

まとめURL:https://github.com/koshian2/MosaicDeeplearningBook
A4 全195ページ、カラー12ページ / 2020年3月発行

Shikoan's ML Blog -Vol.1/2-

累計100万PV超の人気ブログが待望の電子化! このブログが電子書籍になって読みやすくなりました!

・1章完結のオムニバス形式
・機械学習の基本からマニアックなネタまで
・どこから読んでもOK
・何巻から読んでもOK

・短いものは2ページ、長いものは20ページ超のものも…
・通勤・通学の短い時間でもすぐ読める!
・読むのに便利な「しおり」機能つき

・全巻はA5サイズでたっぷりの「200ページオーバー」
・1冊にたっぷり30本収録。1本あたり18.3円の圧倒的コストパフォーマンス!
・文庫本感覚でお楽しみください

北海道の駅巡りコーナー

日高本線 車なし全駅巡り

ローカル線や秘境駅、マニアックな駅に興味のある方におすすめ! 2021年に大半区間が廃線になる、北海道の日高本線の全区間・全29駅(苫小牧~様似)を記録した本です。マイカーを使わずに、公共交通機関(バス)と徒歩のみで全駅訪問を行いました。日高本線が延伸する計画のあった、襟裳岬まで様似から足を伸ばしています。代行バスと路線バスの織り成す極限の時刻表ゲームと、絶海の太平洋と馬に囲まれた日高路、日高の隠れたグルメを是非たっぷり堪能してください。A4・フルカラー・192ページのたっぷりのボリュームで、あなたも旅行気分を漫喫できること待ったなし!

見どころ:日高本線被災区間(大狩部、慶能舞川橋梁、清畠~豊郷) / 牧場に囲まれた絵笛駅 / 窓口のあっただるま駅・荻伏駅 / 汐見の戦争遺跡のトーチカ / 新冠温泉、三石温泉 / 襟裳岬

A4 全192ページフルカラー / 2020年11月発行


Pocket
LINEで送る
Delicious にシェア

Add a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です