画像をただ並べたいときに使えるTorchVision
TorchVisionはPyTorchの画像処理を手軽に行うためのライブラリですが、ディープラーニングを全く使わない、ただの画像処理でも有効に使うことができます。もちろんKerasやTensorFlowといった他のディープラーニングからの利用可能です。今回は、「画像をただ並べたいとき」にTorchvisionを使う方法を紹介します。
目次
想定状況
複数の画像を1枚に縦横に並べて表示したい、画像として保存したいというシチュエーションを想定します。ディープラーニングの場合は、画像を生成するようなモデルで中間結果を出力したいような場合ですね。
ただ、画像を並べる処理をそのたびに書いていくと、そこがバグ出やすいですし、コードのかなりの部分が出力生成に使われて見通しが効きにくくなったりします。特に、出力結果を訓練の終わりにだけ出すケースでは、長時間かけて訓練が全部終わり、画像の結合部分でバグが起き、全部おじゃんになるという非常に悲しい結果がある(経験済み)ので、ここらへんの処理はできればコピペ的に進めたいのです。
そんなとき便利かもしれないのが、TorchVisionのutilsです。torchvision.utils.make_gridという関数を使うとフルオートで画像を並べてくれます。
今回使うデータ
データを1から作ってみます。以下の9枚の単色塗りつぶしの画像を用意します。
import torchvision
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
import torchvision
import torch
# 9x9のカラー画像を作る
def create_color_images():
images = np.zeros((9, 64, 64, 3), np.uint8) # NHWCのフォーマット
# 0-2 = Red, Green, Blue
images[0,:,:,0]=255
images[1,:,:,1]=255
images[2,:,:,2]=255
# 3-5 = Yellow, Aqua, Fuchsia
images[3,:,:,[0,1]] = 255
images[4,:,:,[1,2]] = 255
images[5,:,:,[0,2]] = 255
# 6-8 = Olive, Teal, Purple
images[6,:,:,[0,1]] = 128
images[7,:,:,[1,2]] = 128
images[8,:,:,[0,2]] = 128
return images
左上から、「赤、緑、青、黄色、空色、フクシャ、オリーブ、ティール、紫色」の単色で塗った色です。よくあるやり方のように、pyplotのsubplotを使ってプロットしてみましょう。
# matplotlibでsubplot結合
def raw_pyplot():
# データの読み込み
images = create_color_images()
# subplotを作る
for i in range(images.shape[0]):
ax = plt.subplot(3,3,i+1)
ax.imshow(images[i])
ax.axis("off")
plt.show()
だいたいどんなイメージかわかったでしょうか。
TorchVisionで1枚に並べてみる
TorchVisionを使って複数の画像を縦横に並べてみます。
def torchvision_joint():
# データの読み込み
images = create_color_images()
# PyTorch用に, NHWC -> NCHW に変換
images = np.transpose(images, [0,3,1,2])
# PyTorchのテンソルにする(Numpy配列から作る場合はtorch.Tensorよりas_tensorのほうが良い)
images_tensor = torch.as_tensor(images)
# 一つの画像に統合
# paddingの値→隙間, nrow=行あたりの画像数(端数は埋められる)
joined_images_tensor = torchvision.utils.make_grid(
images_tensor, nrow=3, padding=10)
# PyTorchのテンソル→Numpy配列
joined_images = joined_images_tensor.numpy()
# NCHW -> NHWCに変換
return np.transpose(joined_images, [1,2,0])
def torchvision_plot():
jointed = torchvision_joint()
plt.imshow(jointed)
plt.show()
結果はこのようになります。
慣れない書き方なので順にコードを解説しましょう。まず入力は4次元のNumpy配列です。それぞれの軸は(どのサンプルか=N, 高さ=Height, 横=Width, カラーチャンネル=C)となります。Numpy配列の形式はuint8です。Pillowのインスタンスをnp.asarrayでNumpy配列に変換したときは1枚あたりがこの形式になります。正確にいうと、(H, W, C)の形式になるのでそれを束ねて4次元にしたものがこれです。
次に、テンソルの定義をPyTorchに合わせます。(N, H, W, C)を(N, C, H, W)に変換します。これはnp.transposeという関数でいけます。2番目の引数ですが、「0,3,1,2」は入れ替え前の軸のインデックスを、入れ替え後の並びになるように指定したものです。Nは変わらないので0, 次は元のインデックス3だったC、その次は元のインデックスが2だったH……。という具合です。
その次はPyTorchのテンソルに変換します。ここがちょっと面倒ですが、make_grid関数は生のNumpy配列を受け付けてくれないので、一回PyTorchのテンソルを経由させる必要があります。ただし、torch.Tensorでやったらfloat型にキャストされてしまい、pyplotでの表示上の明度が均一化されてしまったことがある(TorchVision:0.2.2, PyTorch:1.1.0)ので、Numpy配列から作る場合はtorch.as_tensorのほうが良さそうです。
次が本番のtorchvision.utils.make_gridの関数です。この関数によって複数の画像が1枚に合成され、縦横にタイルされます。n_rowはタイル1行あたりに表示する画像数、paddingは表示の間隔ですね(これはあとで変えて確かめてみます)。タイルする画像は全て同じ解像度である必要があります。
ただし、make_gridの返り値はPyTorchのテンソルなので、Numpy配列に戻します。「.numpy()」で一発です。
そして最初に(N, H, W, C)を(N, C, H, W)に変換したのを思い出しましょう。この逆変換をします。ただし、複数の画像が1枚に統合されているので、実際にやる作業は「(C, H, W)→(H, W, C)の変換」です。Hは元のインデックス1、Wはインデックス2、Cは0なので、np.transposeの2番目の引数は「1,2,0」となります。これで結合が終わりです。
n_rowの値を変えると1行あたりの画像数が簡単に変更できる
コードの解説を読んで「逆に面倒臭いな」と思ったかもしれません。ここからがtorchvisionのすごいところなのですが、n_rowの引数を変えるだけで1行あたりの画像数が簡単に変更できます。make_gridのn_rowを2に変えてみました。
これはなかなかすごいです。n_row以外のコードは一切変えていません。端数分はいい感じに調整してくれます。
もしNumpy配列で1枚の黒塗り画像を用意して、逐一コピーしていたら、行列のインデックスがかなりややこしくなると思います(特に隙間の管理)。それを逐一デバッグするのは面倒ですよね?
paddingの値を変えると画像間の間隔が変更できる
同様にして、make_gridのpaddingの値を30に変えてみました。
隙間が広くなりましたね。簡単です。
結合した画像を保存する場合
この方法でTorchVisionが最も効果を発揮するのは、結合した画像をファイルに保存する場合です。表示する場合よりコードが簡潔になります。
make_gridで1枚のNumpy配列を作って、それをPillowで変換して…ってやってもいいですが、純粋にtorchvision.utils.save_imageを使いましょう。内部でやっていることは、make_gridそのままで、PyTorchのテンソルからファイルの保存までを一発でやってくれます。
def torchvision_save():
# データの読み込み
images = create_color_images()
# save_imageで255掛けるため[0,1]スケールにしておく
images = (images / 255.0).astype(np.float32)
# 1枚に結合
images = np.transpose(images, [0,3,1,2])
images_tensor = torch.as_tensor(images)
torchvision.utils.save_image(images_tensor, "jointed_image.png",
nrow=3, padding=10)
これで終わり。出力は次のようになります。ちょっと255で割る必要があるのがこなれない感じはありますが、慣れれば大丈夫かな。
いい感じ。save_imageの内部でmake_gridを呼び出しているので、make_gridと同じです。make_gridでは得意オプションを指定しなくても、テンソル内の最大値・最小値を取ってスケーリングしているため、グレースケールの暗めの画像しかない場合はもしかしたら明るさが変わってしまうかもしれません。
まとめ
PyTorchを全然使う気がなくても、TorchVisionの画像並べる関数(make_grid, save_image)を使うと、見通しがよくなって、ほぼほぼコードコピペできて楽できるよ、ということでした。頭の片隅に入れておくといいのではないでしょうか。
Shikoan's ML Blogの中の人が運営しているサークル「じゅ~しぃ~すくりぷと」の本のご案内
技術書コーナー
「本当の実装力を身につける」ための221本ノック――
機械学習(ML)で避けて通れない数値計算ライブラリ・NumPyを、自在に活用できるようになろう。「できる」ための体系的な理解を目指します。基礎から丁寧に解説し、ディープラーニング(DL)の難しいモデルで遭遇する、NumPyの黒魔術もカバー。初心者から経験者・上級者まで楽しめる一冊です。問題を解き終わったとき、MLやDLなどの発展分野にスムーズに入っていけるでしょう。
本書の大きな特徴として、Pythonの本でありがちな「NumPyとML・DLの結合を外した」点があります。NumPyを理解するのに、MLまで理解するのは負担が大きいです。本書ではあえてこれらの内容を書いていません。行列やテンソルの理解に役立つ「従来の画像処理」をNumPyベースで深く解説・実装していきます。
しかし、問題の多くは、DLの実装で頻出の関数・処理を重点的に取り上げています。経験者なら思わず「あー」となるでしょう。関数丸暗記では自分で実装できません。「覚える関数は最小限、できる内容は無限大」の世界をぜひ体験してみてください。画像編集ソフトの処理をNumPyベースで実装する楽しさがわかるでしょう。※紙の本は電子版の特典つき
- まとめURL:https://github.com/koshian2/numpy_book
- みんなの感想:https://togetter.com/li/1641475
- A4 全176ページモノクロ / 2020年12月発行
「誰もが夢見るモザイク除去」を起点として、機械学習・ディープラーニングの基本をはじめ、GAN(敵対的生成ネットワーク)の基本や発展型、ICCV, CVPR, ECCVといった国際学会の最新論文をカバーしていく本です。
ディープラーニングの研究は発展が目覚ましく、特にGANの発展型は市販の本でほとんどカバーされていない内容です。英語の原著論文を著者がコードに落とし込み、実装を踏まえながら丁寧に解説していきます。
また、本コードは全てTensorFlow2.0(Keras)に対応し、Googleの開発した新しい機械学習向け計算デバイス・TPU(Tensor Processing Unit)をフル活用しています。Google Colaboratoryを用いた環境構築不要の演習問題もあるため、読者自ら手を動かしながら理解を深めていくことができます。
AI、機械学習、ディープラーニングの最新事情、奥深いGANの世界を知りたい方にとってぜひ手にとっていただきたい一冊となっています。持ち運びに便利な電子書籍のDLコードが付属しています。
「おもしろ同人誌バザールオンライン」で紹介されました!(14:03~) https://youtu.be/gaXkTj7T79Y?t=843
まとめURL:https://github.com/koshian2/MosaicDeeplearningBook
A4 全195ページ、カラー12ページ / 2020年3月発行
累計100万PV超の人気ブログが待望の電子化! このブログが電子書籍になって読みやすくなりました!
・1章完結のオムニバス形式
・機械学習の基本からマニアックなネタまで
・どこから読んでもOK
・何巻から読んでもOK
・短いものは2ページ、長いものは20ページ超のものも…
・通勤・通学の短い時間でもすぐ読める!
・読むのに便利な「しおり」機能つき
・全巻はA5サイズでたっぷりの「200ページオーバー」
・1冊にたっぷり30本収録。1本あたり18.3円の圧倒的コストパフォーマンス!
・文庫本感覚でお楽しみください
北海道の駅巡りコーナー
ローカル線や秘境駅、マニアックな駅に興味のある方におすすめ! 2021年に大半区間が廃線になる、北海道の日高本線の全区間・全29駅(苫小牧~様似)を記録した本です。マイカーを使わずに、公共交通機関(バス)と徒歩のみで全駅訪問を行いました。日高本線が延伸する計画のあった、襟裳岬まで様似から足を伸ばしています。代行バスと路線バスの織り成す極限の時刻表ゲームと、絶海の太平洋と馬に囲まれた日高路、日高の隠れたグルメを是非たっぷり堪能してください。A4・フルカラー・192ページのたっぷりのボリュームで、あなたも旅行気分を漫喫できること待ったなし!
見どころ:日高本線被災区間(大狩部、慶能舞川橋梁、清畠~豊郷) / 牧場に囲まれた絵笛駅 / 窓口のあっただるま駅・荻伏駅 / 汐見の戦争遺跡のトーチカ / 新冠温泉、三石温泉 / 襟裳岬
A4 全192ページフルカラー / 2020年11月発行